バラク・オバマ『約束の地 大統領回顧録 Ⅰ(上・下)』(集英社、2021 )

上下二巻で1,000頁を超える大作になった。
しかも、これはまだ第一部で、続編の執筆が進んでいる。
バラク・オバマ/山田文・三宅康雄他訳
『約束の地 大統領回顧録 I(上・下)』(集英社、2021)。



「はじめに」から引用する。


  この本を書きはじめたのは、
  大統領の任期を終えた直後だった。
  執筆に取りかかる前、私は妻のミシェルとともに
  大統領専用機エアフォースワンでの最後のフライトをして、
  ずっと先延ばしになっていた休暇のため西に飛んだ。
  機内には、喜びに混じってほろ苦い雰囲気が漂っていた。


  過去8年の激務だけでなく、
  大統領選挙の意外な結果によって、
  2人とも心身両面で疲れ切っていたのだ。
  その選挙では、私たちが支持するものすべてに
  断固反対する候補者が、
  私の後任の大統領に選ばれていた。
  (略)


  また、次の仕事の計画も立てた。
  大統領職のように波乱に満ちていなくていいが、
  できることなら同じくらい充実感のあることがしたかった。


  仕事に戻る準備ができ、
  ペンとメモ用紙(リーガルパッド)を手に机に向かうころには、
  この本の概要が頭の中ではっきり組み上がっていた
  (私は今でも手で書くことを好んでいる。
  パソコンを使うと、ひどく乱雑な下書きが
  あまりに体裁よく見えてしまい、
  生煮えの構想まで整然と仕上がったように錯覚するからだ)。


  執筆にあたって何より望んでいたのは、
  自分が大統領を務めた期間について誠実に書き記すことだ。
  (略)


  本書が出版されるころには、
  アメリカ大統領選の投票が終わっている。
  今回の選挙がこのうえなく重要であることは間違いないが、
  一回の選挙で決着しないことも私にはわかっている。
  私が希望をもちつづける理由は、アメリカの同胞たち、
  とりわけ次の世代を信頼することを学んだからだ。


  彼らのなかには、
  すべての人の価値は平等であるとする理念が
  当然のものとして深く根づいているようだ。
  親や教師たちはその原理を真実として教えながらも、
  完全には信じていなかったかもしれない。
  だが次の世代は、それを本気で実現するつもりでいる。


  私は誰よりも
  そういう若者たちに向けてこの本を書いた。
  この本は招待状だ。
  世界をもう一度つくり直し、
  努力と決意と豊かな創造力によって、
  私たちの理想と違わぬアメリカを実現する旅に
  ぜひ参加してほしい。


                     2020年8月


池上彰さんが紹介した記事で本書に興味を持った。
(「青春と読書」2021年3月号」)
原著出版から3ヶ月後には
日本語翻訳版で読むことが可能になった。
監訳者・訳者・翻訳協力者 16名がチームに参加している。


A Promised Land

A Promised Land

  • 作者:Obama, Barack
  • 発売日: 2020/11/17
  • メディア: ハードカバー