なぎら健壱『関西フォークがやって来た!ー五つの赤い風船の時代』(ちくま文庫、2021)

タブレット純がパーソナリティを務めるラジオ番組
「音楽の黄金時代」(ラジオ日本、土曜17:55〜20:00)で紹介され、興味を持った。
タブ純が「解説/カンケリの似合うインテリ」を執筆。
なぎら健壱関西フォークがやって来た!ー五つの赤い風船の時代』
ちくま文庫、2021)を読む。


(表紙イラストレーション:朝野ペコ)


2012年に書かれた「あとがき」から引用する。


  五つの赤い風船を介して、日本のフォークの歴史を
  ーーいや、歴史と呼ぶほど大袈裟でもないから、
  ひとつの歩みとでもしておこうか。
  その歩みを書いてみようと思い立ったのは、
  二、三年前のことであっただろうか。

                   (p.337)


続いて、2021年に書かれた
「文庫版はじめに」から引用する。


  そして今回『五つの赤い風船とフォークの時代』が
  文庫化されるにあたって、タイトルを替えた。
  『関西フォークがやって来た!』がメインとなり、
  サブタイトルを『五つの赤い風船の時代』とした。


  なぜ『関西フォークがやって来た!』に替えたかというと、
  ここに書かれているフォークがもてはやされたのは、半世紀前である。
  五十年前に生まれた人は当然
  リアルタイムで当時のフォークを聴いているわけがない。
  母親がフォーク好きで胎教音楽として聴いていたのなら
  分からないでもないですがね……。
  シルバー世代がフォークを知らなくなっている時代なのである
  ーー忘れられているのではなく、端(はな)から知らないのである。


  そこで編集者が、
  「五つの赤い風船をとおして、十分関西フォークの生い立ちになっていますよ。
  確かに五つの赤い風船の歴史ですけど。
  そこから見えるのはやっぱり関西フォークなんですよ。
  『関西フォークがやって来た!』でいきませんか? 
  当時を知らない若者に、関西フォークとはなんぞやという意味で、
  そちらの方が分かりやすい呼称と思って下さい」
  なる言葉にほだされたからである(ママ)。


  しかし関西フォークを語るには、
  五つの赤い風船だけを語ったのでは
  語り足りない部分があまりにも多すぎる。
  この一冊を、関西フォークを知る導入部と思ってもらうしかない。
  (略)


  『日本フォーク私的大全』『高田渡に会いに行く』
  『関西フォークがやって来た!』を
  なぎらの、いや日本のフォーク・ソングの三部作として、
  併せて読んでいただきたい。
  すると前述の「関西フォークを知る導入部だと思っていただきたい」
  が分かっていただけると思う。
  (略)

                    (pp.19-21)


本書は2012年7月25日にアイノアより刊行された
五つの赤い風船とフォークの時代』を加筆修正して文庫化(p.351)。
ちくま文庫編集部:許士陽子、永田士郎)


「大衆文化・芸能」と呼ばれる領域の歴史は
誰かが記しておかなくては雲散霧消してしまう。
なぎら健壱は自身アーティストであり、
日本のフォークに関する貴重な書き手だと思う。
そしてタブ純は歌謡曲の歴史を大通りだけでなく
めったに人が訪れない脇道小道まで探索し、語り継いでいる。



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(なぎらが確固たる風船のアルバムと認める5枚。二枚組『New Sky』『Flight』は当初別々に発売)