クリッピングから
岩波書店PR誌「図書」2022年6月号
<対談> 戦争文学で反戦を伝えるには
逢坂冬馬(あいさか とうま・作家)/奈倉友里(なぐら ゆり・翻訳家)
それぞれ異なる領域で活躍する二人は実は姉弟。
初対談になった (2022年3月19日、Zoomにて)。
(その後二人は、NHKラジオ第一「高橋源一郎の飛ぶ教室」
2022年4月29日放送・2時間スペシャルにゲストとして出演。
依頼した源一郎さんはそのとき二人が姉弟と知らなかった)
奈倉 私としても、確かに事前に狙撃学校の資料は翻訳したものの、
(引用者注:逢坂が『同志少女よ、敵を撃て』執筆のため
中央狙撃学校ロシア語情報の翻訳を依頼した)
応募作品は読んでいなかったんですよね。
受賞後に読ませてもらったとき、
個人的には二つの点で「すごいな」と思った。
まず一つは、歴史の有名な局面を小説として描く場合、
どこかで「これはフィクションです」という予防線を張って
描かれることが多いなかで、
この作品は歴史に対する踏み込みに躊躇がない。
怖いもの知らずというか(笑)、
でもだからこそ読み手は、
もっと歴史を知りたいという気持ちにさせられる。
二つめは、これは作品としては
エンターテインメントの読者に届くように書かれているわけですが、
同時にエンタメ読者が普通触れることのない
エフトゥシェンコなんかが重要なところで出てきて、読者の心に残る。
だから翻訳文学とエンタメの架け橋に
なってくれるような作品なんじゃないか、
ここからソ連や現代ロシアの小説に興味を持ってくれる層も
いるんじゃないかと思いました。
(略)
(pp.6-7)
この「対談」ではインタビュアーの聴く技術が高い。
二人から思いも寄らぬ話を引き出すために
どれほどの事前準備が必要であったか。
「図書」編集部の方であろうか。