たった一つの小さな誇りは、グレることなく、気強く生きてきたこと(木下スミ子)

クリッピングから
毎日新聞2022年6月18日朝刊
読者投稿欄「みんなの広場」
グレずに気強く生きてきた
主婦 木下スミ子 75 (福岡県)


  8日付本欄「自慢の父に叱られて」を読み、
  何と幸せな親子関係だろうと目頭を熱くしました。
  そして私の惨めな記憶もよみがえりました。


  生活力がなく酒乱だった父。
  ヒステリックな母。
  その矛先は主に私に向かいました。
  ひそかに抱いた夢に向かい、
  買えない教科書と参考書をクラスメートに借りて努力しました。


  中学1年のある日、
  父は「早く働いてお金を入れろ」と言い、
  母は「お前の宿命」と言いました。
  中学2年の夏休み、クラスメートは進学に向けて励んでいるのに、
  私は小さな包みを渡され、母の知人宅に住み込んで働きました。


  中学卒業後の選択肢は集団就職のみでした。
  お金を工面することに腐心する毎日。
  今あるたった一つの小さな誇りは、
  グレることなく、気強く生きてきたことです。
  今の若い人たちは誰一人取り残されることなく、
  ぬくもりのある人生を送ってほしいと願います。