毎週最終金曜日のお楽しみは
朝日新聞月イチ連載「池上彰の新聞ななめ読み」
2019年5月31日付朝刊より
欧州議会選で見えたもの
EU懐疑派の定着 なぜ
イギリスの離脱をめぐる混乱など、
このところニュースになることの多い欧州連合(EU)ですが、
欧州議会選挙の結果が出ました。
欧州議会の存在は、なかなかわかりにくいものです。
その役割を解説しているのが本紙5月28日付朝刊の
「いちからわかる!」です。
(略)
EU懐疑派勢力はなぜ定着したのか。
その理由がわかる記事が、
投票結果が判明する前の26日付朝刊に掲載されていました。
見出しは「忘れられた地方 右翼政党が照準」とあります。
「忘れられた地方」という表現は、
アメリカでトランプ大統領が当選したとき、
当選の理由として使われました。
中央政治から「忘れられた地方」の人たちが、
現実への不満から極端な言動の候補者を支持したという分析です。
記事の中で、フランスの右翼政党の国民連合の集会に参加した
年金生活者は「地方の実情をろくに知らない(EU本部の)ブリュッセルで
ものごとが決まるから、ますます生活が悪くなる」と語っています。
アメリカの「忘れられた地方」の人々が
首都ワシントンを敵視したように、
ここではブリュッセルが敵視の対象です。
(略)
こうした状況を経済から分析した記事が、
やはり日経新聞の同日(引用者注:26日)付朝刊に掲載されています。
スウェーデンのシンクタンクのデータをもとに、こう解説します。
<2018年までに実施された直近の選挙でのポピュリズム政党への投票率は
イタリアが56.7%、ギリシャは57%と過半を超え、10年前に比べて
それぞれ約40ポイントも上昇した。
直接的な要因は長引く景気低迷だ。
18年の失業率はギリシャが19.3%、イタリアが10.6%に達した。
こうした状況のなか、雇用や治安の悪化を全部ひっくるめて移民のせいにし、
野放図な財政拡張を主張するポピュリズム政党が人気を得てしまう構図だ>
失業率の高さとポピュリズム政党の支持率の高さは相関関係にある。
なるほどという分析です。
池上さんの今月の締めの言葉はこうでした。
経済が落ち込む中でのヒトラーのナチスが伸長した
第2次世界大戦前の欧州を想起してしまいますが、
この連想は当たっているのか、心配しすぎなのか。
解説を待ってます。
池上さんの近著『おとなの教養2』(NHK出版新書、2019)と合わせて読むと
世界の動きを読み解く助けになります。
おとなの教養 2―私たちはいま、どこにいるのか? (2) (NHK出版新書)
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