国境を越えた大きな家族になれた(岩城千珠)

クリッピングから
朝日新聞2019年7月9日朝刊
読者投稿欄「ひととき」 元夫がつないだバトン 
横浜市 岩城千珠(ちず) 会社経営 52歳


   異国で暮らすダウン症の息子が、二十歳になった。
   国際結婚の末、10年ほど前に円満離婚。
   息子へのサポートの必要性などから、
   親権は現地生まれの元夫に渡った。
   「仕事もお金もない外国人」となった私は一人日本に戻った。


   泣き暮らす日々だったが、
   「大切に育てる」「いつでも会いに来て」
   という元夫の言葉が救いだった。
   彼は約束通り、愛情たっぷりに育ててくれた。


   どこに行くにも息子と一緒。
   大道芸人で様々な国を旅して回り、
   息子に芸も教えていた。
   いまも息子は芸を披露するのが大好きだ。


   しばらくして元夫が病に倒れた。
   「死」を突きつけられた告知の日、
   元夫と2人、電話で声を上げて泣いた。
   だが、精神的に不安定になるような闘病の中、
   息子に素晴らしい里親を見つけてくれた。
   そして2年前に亡くなった。


   今年、息子が里親やその子どもと来日した。
   10日間を一緒に過ごし、息子がいかに愛されているか実感した。
   私たちは、国境を越えた大きな家族になれたような気がする。
   私はこれからも、毎年会いに行く。
   元夫がつないでくれた愛情のバトンが、この先も途切れないように。


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記事を読んで、こんな人生が本当にあるんだな、と思った。
元夫が生前見つけた里親、ダウン症の息子さん、岩城さんが
日本で10日間一緒に過ごし、これからも付き合いが続くことは
なんだか奇跡のように思える。


この投書を採用してくれた担当者に感謝。
新聞にはまだまだ底力があります。