なぜ古書店だけが休業を要請されたのか(花井敏夫)

クリッピングから
「えぽっく」2020年9月1日発行(第21巻3号通刊106号)


「えぽっく」は、古書を取り扱う目白・金井書店が
不定期刊行する情報誌(創刊20年、年平均5回発行)。
広げると展示販売のカタログになっている。


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巻頭に代表社員・花井敏夫さんのエッセイを
毎号掲載している。
引用する。


  新しい生活様式


  (略)
  新型コロナウイルス感染症に振り回された半年、
  「新しい生活様式」のもと、
  古書の世界はどのように変わってゆくのでしょうか。
  (略)


  およそ20年前、インターネット販売ツール
  「日本の古本屋」の将来について議論が交わされていました。
  不要論もありましたが、既にアマゾン、ヤフーオークションなどの急成長も見られ、
  自前のツールを持つべきとの意見も若手を中心に拡大しました。
  休業を余儀なくされた今回
  (引用者注:4月10日から5月25日までの東京都緊急事態措置期間)
  「日本の古本屋」に感謝する方が多かったことでしょう。


  それにしても、新刊書店は営業できて、
  古書店は休業要請対象とは、理由が明確になっていません。
  あるコメンテーター曰く「いろいろな人が触っているからですかね〜」
  と言葉を濁していました。
  休業協力金に甘えることなく、要請対象となった理由を把握しなければ、
  飛躍に繋がらないことでしょう。
  (略)


  大学は遠隔授業が続き、小学校まで拡がり、
  在宅勤務も多くの人が経験しています。
  この状況に急がされたのか、
  オンライン学習、業務に活用できる「ジャパンサーチ」の正式版が公開されました。
  著作権の対応も必要ですが、
  将来的には多くの史料が画像で閲覧できるでしょう。
  貴重な資料が身近な存在になったなら、
  新たな発想に繋がるかもしれません。


  「新しい生活様式」が、人間の本能を変質させたり、
  衰退させる要因とならぬことを願っています。
  (略)

                       金井書店 花井敏夫


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つい最近、ハンナ・アーレント『全体主義の起原』(みすず書房、全3巻)
「日本の古本屋」を通じて金井書店で購入した。
(掘り出し物価格が付いていた!)
同梱してあった「えぽっく」3号分の花井さんの巻頭言がよかった。
東京都の緊急事態措置期間、なぜ古書店は新刊書店と区別され
休業を要請されたのか、僕も疑問を持っていた。
「古本=汚い」と単純思考する役人の判断だったのか。


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