朱野帰子『会社を綴る人』(双葉社、2018)

地味な物語である。
それでも最後まで読ませる力がある。
朱野帰子『会社を綴る人』(双葉社、2018)を読む。


会社を綴る人

会社を綴る人


主人公の紙屋くんは何の取り柄もないと自分では思っている。
唯一自慢できるのは作文コンクールで佳作を取った文章力だ。
フリーターで暮らしていたが、このまま家族の足手まといになるのはイヤだと
リクルート会社の助けを借りて面接に出掛ける。


紙屋くんを拾ってくれたのは最上製粉。
食品会社に卸す小麦粉の精製が主な業務の老舗で、社員約200名。
総務部正社員。年収額面420万円。福利厚生完備。
入社後、紙屋くんはありとあらゆる失敗を繰り返す。


けれど、彼にはひとつだけ突破口があった。
文章力を活かして社内文書に取り組むことだった。
他の本を読むのに疲れて朱野作品に帰ってくると
なんだかホッとする。
人物描写がいいのかな。


f:id:yukionakayama:20190628185207j:plain:w550


  初出:「小説推理」2017年10月号〜18年2月号
     単行本化にあたって加筆修正

知識を身につけること、その使い方を身につけること

クリッピングから
朝日新聞2019年6月27日朝刊
大学進学特集 クイズ王の受験録
現役東大生クイズ王 水上 颯(みずかみ そう)さん


  基礎知識を習得し使いこなすために


  受験勉強は、費やした時間が結果に反映されるまでに
  少し時間がかかるものだと思います。
  (略)


  僕の苦手な数学では、それが顕著です。
  覚えるべき基本的な公式や定理などを頭に入れることが
  第一段階なのですが、それだけでは入試問題は解けません。
  練習問題などを通してその公式や定理の使い方を身につけ、
  柔軟に使いこなせるレベルまでもっていく必要があります。
  そうすることで、問題の取りかかり方が見えてくるようになる。
  これが第二段階です。


  解けなかった問題でも、
  答えを見ると案外簡単だったということはよくありますが、
  実践を重ねることで数学的思考力が磨かれていき、
  初めて見る問題でも解く筋道を立てられるようになっていきます。
  知識を身につけることと、その知識の使い方を身につけること。
  そのどちらかが不十分だと、なかなか結果に現れません。
  (略)

  (談)


f:id:yukionakayama:20190627122443j:plain:w550


時間を作って高校数学を学び直している。
これが全然簡単じゃない!
数学的思考力がこんなに弱っていたなんて、
自覚症状がなかった。
水上さんの言う第二段階が僕にも役立つと思った。


公式や定理を柔軟に使いこなせるよう
練習問題に一問ずつ進むのだ。
問題ごとに時間を決めて、
時間内に解けなければ答えを見てもう一度やり直す。


勘が戻ってくるまでにはまだ時間がかかりそうだな。
知識の使い方を身につけるには
頭だけでなく手を動かした方がいいんだね。
脳と手の合同ストレッチといったところですかね。


新体系・高校数学の教科書 上 (ブルーバックス)

新体系・高校数学の教科書 上 (ブルーバックス)

佐藤優さん大推薦の名著です。上下二冊。中学数学上下もあります)

松屋がセルフサービスになっていた

改装が終わった松屋に行ってみた。
お、なんか前と様子が違うぞ。
食券を店員に渡そうとしたら、
「席でそのままお待ちください」と言われた。


病院のロビーにあるような電光掲示板があって、
自分の食券番号が点滅したら注文した料理のできあがり。
配膳カウンターまで取りに行く。
食べ終わったら自分で食器を返しに行く。


ファストフード店の労働力不足が深刻になっている。
セルフサービスで客が動くことで
その分の手間暇を補おうという訳だ。
コーヒーチェーン店で導入されている方法が
いよいよ牛丼チェーンにもやってきたんだね。


f:id:yukionakayama:20190626135046j:plain:w500


店を出ると「利用方法のご案内」が出ていた。
客と店員の間で特に混乱はなかったから、
よく利用する人には既に周知なのだろう。
知らなかった。

小説を選ぶとき、ブッカー賞は頼りになる(小野正嗣)

クリッピングから
朝日新聞2019年6月26日朝刊
文芸時評 作家 小野正嗣
多様性 ぶつかり合ってこそ


  文学賞の審査


  人はどのようなきっかけで小説と出会い、
  それが読みたくなるのだろうか。
  小説の選択の指標として文学賞はどうだろうか。
  僕がかなり頼りになると思っているのが、
  イギリスのブッカー賞である。


  カズオ・イシグロも歴代受賞者に名を連ねるこの文学賞は、
  2014年からイギリスや英連邦諸国だけでなく、
  国籍を問わず英語で書かれた全世界の小説を対象とするようになった。
  母集団がとてつもなく大きい。
  受賞作はむろん、最終候補作の質の高さも期待できるというものだ。
  (略)


  英米のこれら二つの文学賞(引用者注:ブッカー賞ピュリッツァー賞)の
  質の高さは、おそらく公正さと多様性を軸とする審査システムとは
  無関係ではないだろう。
  日本では文学賞の多くが出版社によって主催されるが、
  両賞の場合、出版社から独立した組織が主催する。
  

  そして審査員が毎年入れ替わることで、
  審査の多様性が担保されていることも重要だ。
  もちろんそこには、
  審査員職が既得権益になることを防ぐ意味合いもあるだろう。


  また、審査員が作家だけで構成される場合が多い日本と違い、
  両賞の場合は、作家に加えて必ず編集者や批評家や
  学者(文学研究者に限らない)も審査に加わる点も見逃せない。
  毎回、まったく異なる視点や文学観がぶつかり合い混じり合うからこそ、
  選ばれる作品が面白くなる。


  2019年度のブッカー賞の審査員が発表されて驚いた。
  知人の作家で映画監督グオ・シャオルー(郭小櫓)の名前もあったからだ。
  中国南部の漁村出身で、北京電影学院では、
  9月に日本でも新作「帰れない二人」が公開されるジャ・ジャンクー監督とともに学び、
  20代で渡英したシャオルーは、
  以来<母語ではない英語で>小説を発表し続けている。
  2年前に刊行した自伝エッセイは全米批評家協会賞を受賞している。


  ブロークン・イングリッシュだと言いながら、
  マシンガンのように喋(しゃべ)るパワフルな女性だ。
  そのような作家を審査員として迎え入れるブッカー賞の懐の深さ。
  10月の結果発表が楽しみ。


f:id:yukionakayama:20190626124955j:plain

I Am China: A Novel

I Am China: A Novel


英語圏の小説の世界で文学賞
とりわけブッカー賞がどんな位置づけにあるのか
筆者の見解が参考になった。
英語で書かれた小説を選ぶとき(日本語訳も含めて)に役立つだろう。
近頃気になり購入した文庫の訳者が筆者だったので
この記事に目が止まった。


アイデンティティが人を殺す (ちくま学芸文庫)

アイデンティティが人を殺す (ちくま学芸文庫)

国会議員も身を切る姿勢を示すべきだ(山口那津男公明党代表)

クリッピングから
朝日新聞2109年6月21日朝刊
衆参歳費1割減 公明公約で調整


  公明党20日参院選公約の柱の一つに、
  衆参両院の給与に当たる歳費の1割削減を盛り込む方向で最終調整に入った。
  10月からの消費税率を10%に引き上げることに絡み、
  山口那津男代表が20日の党会合で
  「国民に負担を求める以上、国会議員も身を切る姿勢を示すべきだ」
  と提案。


  事前の根回しもなかったため、
  「公約に入れるかどうか議論する時間がない」など慎重意見もあったが、
  最終的に山口氏に一任された。
  削減幅1割程度を軸に自民党にも協力を求める方針だ。


f:id:yukionakayama:20190621123122j:plain:w550


政治活動は本来、金のかかるものだ。
金権政治を批判するあまり、政治家として必要な金の話が地下に潜って
国民から見えなくなる方がたちが悪い。


とは言え、参院選公約に歳費1割削減を含めることを
党代表が根回しせずに提案し、結論を一任されたことに着目した。
山口代表はどう行動し発言すれば有権者の関心を惹きつけられるか、
ツボとタイミングを心得ている政治家だと思う。
小さな記事だがクリッピングしておく。

常見藤代『イランの家めし、いただきます!』(産業編集センター、2019)

クリッピングから
朝日新聞2019年6月21日朝刊 書籍広告
常見藤代『イランの家めし、いただきます!』
(産業編集センター、2019)


広告の一行惹句はこうある。


  イスラム専門フォトグラファーの私的イラン旅行ルポ


f:id:yukionakayama:20190621122940j:plain:w450


Amazonの内容紹介を見てみよう。


  言葉が通じなくても快く迎え入れてくれる、
  おせっかいであたたかな人々との出会いと、
  それぞれの家でご馳走になった“家めし"をめぐる食紀行。
  食を通してイランのライフスタイルが見えてくる!
  数多くの著者撮影の写真とともに、
  コラムではイランの家庭料理のレシピを掲載。
  見ごたえ読みごたえのある一冊。


イランの家めし、いただきます! (わたしの旅ブックス)

イランの家めし、いただきます! (わたしの旅ブックス)


米国との政治的緊張、核開発の疑惑ばかり報道されるが、
イランに暮らす市井の人たちの姿はなかなか伝わってこない。
写真家はイランの「家めし」に注目した。
みなさんが普段どんなものを食べているのか、僕も気になった。

500円近いラテ、毎朝飲めるわけないじゃん

クリッピングから
「モーニング」2019年7月4日号
秋月りすOL進化論」ないしょ話、その1344


  つっこみ今昔(こんじゃく)


    バブル時代のトレンディドラマ
    「どうぞ」


  当時の人々
  「へっ 独身のOLがこんな部屋
   住めるわけないじゃん」
  「リアリティないよー」


    最近のドラマ
    「おはよ」


  「あのラテ 500円近くするやつだ」
  「派遣が毎朝そんなもの飲めるわけないじゃん」


f:id:yukionakayama:20190630124849p:plain:w450


働くOLたちの周りで
「なるほど!」と感心する場面を見逃さないのが「OL進化論」。
シニア社員の僕もポットにアイス麦茶、アイスコーヒー持参で
オフィスに通ってます。
500円近いラテなんて買えるわけないじゃん、ね。