偶然に出会えた人情に絆(ほだ)されたい


きょうのスクラップブックから。
毎日新聞2017年10月15日朝刊(日曜版)
「今週の本棚」—オオゼキタク「昨日読んだ文庫」



   発想のきっかけとなる言葉は旅先に落ちている、
   とか何とか言い訳を見つけては
   窮屈な部屋を抜けだし、ひとり鉄道旅に出かける。
   (中略)


   そこへ行くと鈍行のローカル列車なんかたまらない。
   旧型気動車の緩い加速、行き違いの待ち時間。
   土地の言葉。生活のにおい。
   夜行列車もいい。過ぎ行く街の灯(あか)り。
   垣間見える寂しげな街の素顔。
   そういった一つ一つが「ラララ」と融合して曲になっていく。
   いつしか季節ごとに鉄道旅をするのが習慣になった。
   (中略)


   誂(あつら)えられた通りに
   付加価値を消費するのも一つの旅。
   でも頭をひねりながら自分で旅をつくり、
   乗り間違えさえ楽しみ、
   偶然に出会えた人情に絆(ほだ)されたい。
                 (シンガー・ソングライター



この文章自体が紀行文として
読者を鉄道旅に誘う魅力があった。
鈍行列車、夜行列車の旅には
文庫本がよく似合う。


終着駅 (河出文庫)

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夜明けのスピード

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