いつか終わるとしてもいまじゃなかった(桐島あお)

クリッピングから
讀賣新聞2024年3月19日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  家中に枯れた葉っぱが落ちていて
  終着点で二歳はねむる

      東村山市 月出里ひな


    【評】外遊びで拾ってきた葉っぱだろう。
      ヘンゼルとグレーテルのパン屑(くず)のように
      たどっていけば、疲れ果てた二歳児がいる。
      終着点という表現が、時間と空間の流れを感じさせて効果的だ。


  剝げかけたネイルに乗せるラメ
  いつか終わるとしてもいまじゃなかった

           朝霞市 桐島あお


    【評】このラメのように、修復して取り繕って、
      もう少し終わりを先延ばできればよかった。
      上の句と下の句の響きあいが絶妙だ。


  向かいには名もない川が流れてて
  川も私の名前を知らない

         燕市 田巻由美子


    【評】自然との向き合い方が対等で親しみがあって魅力的だ。
      下の句にはっとさせられる。
      川の前には、私も名もなき存在なのである。



4月第2週から万智さんが選者として登場します。楽しみ)

書籍広告:『五木寛之セレクション III』【異国ロマンス集】(東京書籍、2024)

クリッピングから
讀賣新聞2024年3月19日朝刊
書籍広告 『五木寛之セレクション III』【異国ロマンス集】
「霧のカレリア」「ソフィアの秋」他
対談解説(45頁)四方田犬彦



  白夜の街に繰り広げられる
  「愛と運命の物語」を描く名作6編を収録。
  著者初のテーマ別作品集、最新第3巻。
  五木寛之著 定価1980円


IとII、IIとIII、
刊行にずいぶん間があるなと心配していた。
余計なことだが、五木さんの年齢を考えると
このペースで何巻まで出せるのかなと気になる。
各巻ごとの対談解説がたっぷりあって(今回も45頁)
読み応えがある。
教科書出版で知られる版元が出しているのも面白い。



(対談解説(60頁)佐藤優


(対談解説(50頁)マイク・モラスキー

Eテレ <スイッチインタビュー> 特別編「坂本龍一 X 福岡伸一」

Eテレ<スイッチインタビュー>
特別編「坂本龍一×福岡伸一」EP1/EP2を見る。


NHKサイトから引用する。


  2023年3月に逝去した音楽家坂本龍一
  ともにニューヨークで活動し、交流があった生物学者福岡伸一
  2017年に行った貴重な対談を、特別編集でお届けする。


  <EP1>
  坂本が当時取り組んでいたアルバム「async」。
  街の騒音などのノイズを取り込み、
  秩序だった既製の音楽とは異なる楽曲に挑んだ。
  EP1では、坂本のコンサートが開かれたホールを福岡が訪れ、
  金属を加工した独特の楽器に触れながら、新たな音楽観に迫る。 
  (初回放送日: 2023年8月18日)


  <EP2>
  福岡伸一が研究を行うロックフェラー大学を、坂本龍一が訪ねる。
  ベストセラー「生物と無生物のあいだ」などの著作で
  “生命の不思議”を伝え続けている福岡。
  長年の遺伝子研究の末にたどり着いた“動的平衡”の概念や、
  人間の論理にとらわれない、ありのままの自然を認識することの重要性を語り合う。
  坂本が取り組む音楽と生物学の共通点、生命と音楽の起源についても議論。
  (初回放送日: 2023年8月25日)


(番組での発言をまとめた書籍版。追加新章あり)


プチウォーキング&太極拳、続いてます

日没少し前に出掛ける
プチウォーキング&太極拳
だんだん日が長くなってきて
スタート時間がゆっくりしてきました。



ウォーミングアップ、24式套路(とうろ)2回、クールダウン。
行き帰りの時間込みでワンセット1時間弱。
日が沈んだ後は公園内の街灯が点きます。
日のあるうちはお花見組がチラホラ出てきました。

柑橘系の会話が残る(森久保りりか)

クリッピングから
毎日新聞2024年3月11日朝刊
毎日歌壇(加藤治郎選)
好きな歌3首、抜き書きします。


  通学路「これみかん?」「ゆず?」「ゆずだこれ」
  柑橘(かんきつ)系の会話が残る

             横須賀市 森久保りりか


    <評>生徒の会話を聞いている。
       みかんとゆずの色や香りが想像できる。
       甘酸っぱい感じだ。
       定型に言葉が乗って心地よい。


  フェルナンデスベニイタダキハチドリの
  鳴き声にする君の着信

          ふじみ野市 雨雨雨汰



    <評>ファン・フェルナンデス諸島に生息する鳥である。
       音韻優位の楽しい作品だ。


  ブレザーは椅子にかけられ
  思い出はいつも夕焼け色をしていた

           堺市 初夏みどり





研究社辞書編集部編『コンパスローズ和英ライティング辞典』(研究社、2023)

研究社のXのポストで初版品切れが続いていた本書が
重版出来したことを知った。
アプリで在庫を確認してBOOK 1st. 新宿本店にプチ遠征する。
研究社『コンパスローズ和英ライティング辞典』
(研究社辞書編集部編/崎村耕二・Laurel Seacord監修、2023)を購入。



「まえがき」から引用する。


  従来の和英辞典は限られたスペースで英訳し、
  しかも広い用途に役立てようとするため、
  実際に英文を書く際に必要となるコロケーションや
  文型の情報にも限界がありました。
  そのため、英和辞典や英英辞典を引き直して
  単語の運用情報を確認するという作業も必要となりました。


  それに対し、本書では着地点となる英語表現を
  具体的に見据えて編集することにより、
  「引き直し」の必要性を極力なくすことを試みています。


  かつて日本人の英作文に和英辞典は欠かせないツールでしたが、
  その利用者は減少傾向にあります。
  さらに、インターネットの出現で英語を書くための情報が
  簡便かつ膨大に得られるようになり、
  AIによる翻訳・校閲ツールも無料で提供され、
  ますますその在り方が問われています。


  我々のささやかな試みがそのような時代の
  新たな一歩になれば幸いです。
  (略)

     2023年3月 研究社辞書編集部

               ([3]〜[4])


「この辞典について」から引用する。


  本書は、英文ライティングに役立つ用例から抽出した表現を
  約 1,000 の項目のもとに収録した. 
  さらにWeb版と合わせて約 15,000 項目の検索が可能となる.


書籍購入者には
研究社ホームページからWeb版にアクセスするための
ユーザーID、パスワードが提供される。
書籍版はバーチャル辞典全体の1/15をまとめたエッセンスなのだ。
つまり本書15冊分の言語リソースを税込2,970円で使えることになる。


研究社はKOD(研究社のオンライン辞書検索サービス)も提供している。
本書同梱のPR小冊子から引用する。


  『リーダーズ英和辞典<第3版>』はじめ、
  新しく追加された『コンパスローズ英和辞典』など、
  定評のある研究社の17辞典が24時間いつでも利用可能。
  新項目も定期的に追加。
  オンラインならではの豊富な機能で自在に検索できます。

  新会員募集中!
  1ヵ月550円(税込)から


本辞典もKODに2023年10月に追加され
会員は使えるようになった。


監修者2名以外の本書制作チームメンバーは以下の通り。
英語辞典で定評のある研究社らしい意欲的なプロジェクトだと思う。


  執筆・校閲 大石由紀子、Steven Kirk、川本玲子

  装丁    Malpu Design(清水良洋)

  編集部   中川京子、青木奈津美、向友里菜、星野龍、市川しのぶ、
        小倉宏子、高見沢紀子、三島知子、根本保行


(英文ライティングに重宝している一冊)


  1993年初版のこの辞典は
   "a radically different type of dictionary" を謳っていました。
  "Preface" を引用する。


   The conventional dictionary has become better and better during the many generations
   since Longman published Samuel Johnson's great work in 1755.
   But better and better at basically the same job:
   explainingwhat someone else has said or written;
   that is converting words into meanings for the passive partner in communication.


   For the active partner, striving to convert meanings into words,
   such a dictionary is less helpful,
   and the Longman lexicographers have now produced a radically different type of dictionary
   with precisely this active partner's needs in mind.


   Moreover, by attracting users to major 'Key Word' entries such as SUMMERIZE,
   The Longman Language Activator performs a double function.
   It presents linguistic - not just lexical - information in a rich,
   convenient and production-oriented way.
   This transcends word boundaries (in short is there)
   and grammaticalcategories (a rundown is there, but also to sketch out).


   Secondly, the Activator gently obliges users by this format
   to train themselves in preparatory thought and planning.
   They are encouraged to single out a word
   representing the beginnings of what they want to state
   and then helped to home in on 'ideas boxes'
   in whichsemantically relevant and suggestive expressions are presented.
   An initial skeleton can thus be fleshed out
   and be given not merely a satisfying fullness but the desirable linguistic precision.

                          Professor Sir Randolph Quirk

恩田陸『灰の劇場』(河出文庫、2024)

恩田陸『灰の劇場』(河出文庫、2024/河出書房新社、2021)を読む。



「文庫版 あとがき」から引用する。


  『灰の劇場』は、雑誌「文藝」に、
  2014年から2020年にかけて、六年にわたり連載したものだ。
  フィクション(=「1」章部分)と
  ノンフィクション(=「0」章部分。
  主に、フィクション部分の執筆過程)が交互に続く、
  という、自分でも初めての形式で書いた小説だ。


  執筆過程の部分は、
  ほぼ(多少、特定を避けるために書き換えてある)事実である。
  作中で書いてある通り、実際に目にした
  1994年9月25日の朝日新聞の三面記事がずっと頭に残っていて、
  何人かの編集者に、この事件を基に小説を書きたい、と話したことがあったし、
  その一人が河出書房新社の、この小説にも出てくるO氏であり、
  実際O氏が当時の新聞記事を探してきてくれた。
  (略)


  考えれば考えるほど、
  「事実に基づく物語」どころか、事実そのものに打ちのめされる。
  もし、『灰の劇場』を書き始める前にこの事実を知っていたら。
  少なくとも、小説の方向性は全く違うものになっていたはずだ。


  もしかすると、やはりこれは私が書くべき因縁の物語だったのだ、
  と強く自覚して小説を書き始めたかもしれない。
  あるいは、運よく作家デビューでき、生き残ることができた者からの、
  二人への鎮魂の作品となっていたかもしれないーー
  などという、もっともらしく薄っぺらい、白々しいことは言うまい。


  正直に言おう。
  もし、この事実を書く前に知っていたら、
  私は『灰の劇場』は書けなかったと思う。
  この偶然、この符号。あまりにもできすぎだし、
  むしろ、わざとらしくて書けない、と判断したはずだ。
  モノを書く、ということの不思議さを思う。
  (略)


朝日記事のコピーが腰巻に以下の通り掲載されている。


  飛び降り2女性の身元わかる

  今年四月二十九日に
  西多摩郡奥多摩町の北氷川橋(高さ二十六㍍)から
  日原川に飛び降りて死亡した二人の女性の身元は、
  二十四日までの青梅署の調べで、
  大田区のマンションに同居していたAさん(四五)、
   Bさん(四四)と分かった。
  二人は都内の私大時代の同級生だった。