歴史

岡田英弘『歴史とはなにか』(2001)

岡田英弘『歴史とはなにか』を読む。 大胆な仮説を提示する先生である。 ときどき論理が飛躍するので 付いていくのに息切れがする。 歴史とはなにか (文春新書)作者: 岡田英弘出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2001/02/01メディア: 新書購入: 15人 クリック…

有馬哲夫『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』(2013)

有馬哲夫『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』を読む。 アメリカの公文書を史料としてふんだんに使い、 これまでの類書とは異なるアプローチを取っている。 それなのに児玉の自伝『悪政・銃声・乱世』(1974) に比べると 読後感が物足らないのはなぜだろう。 児玉誉士…

火星人が書いた地球の歴史

宮崎市定『中国史(上)』(1977)を再読する。 先生、70代中盤の作品である。 筆に少しも衰えを感じないどころか、 既知数の研究者でなく未知数の世代を読者に想定した 本書の気迫はどうだろう。 中国史 上 (岩波全書 295)作者: 宮崎市定出版社/メーカー: 岩…

宮崎市定『古代大和朝廷』(1988/1995ちくま学芸文庫)

宮崎市定『古代大和朝廷』を読む。 いまとなっては叶わぬ夢だが、 宮崎の日本史通史を読みたかったと思う。 アカデミズムの世界は 昔も今もつまらぬ壁や慣例があるようだ。 宮崎の知は歴史を読み解くためには アジア史、中国史、日本史、壁を越えて自由自在…

重光葵『昭和の動乱(下)』(1952/2001中公文庫)

重光葵『昭和の動乱(下)』を読む。 重厚な歴史書である。 下巻は日独伊三枢軸から大東亜戦争、降伏まで。 国家の中心でなにが起きていたのか、 重光はあくまで事実を中心に淡々と記録していく。 それだけに日本という国家が あわや崩壊しかけていた様も生…

重光葵『昭和の動乱(上)』(1952/2001中公文庫)

東京軍事裁判の二年半、巣鴨の牢獄生活の四年に 昭和史の主要登場人物のひとりが綴った記録である。 あの時代の日本にこんな官僚、政治家がいたのかと僕は感心した。 重光葵『昭和の動乱(上)』を読む。 昭和の動乱〈上〉 (中公文庫BIBLIO20世紀)作者: 重光…

『児玉誉士夫自伝ー悪政・銃声・乱世』(1974)

『児玉誉士夫自伝ー悪政・銃声・乱世』を読む。 早野透『田中角栄ー戦後日本の悲しき自画像』、 工藤美代子『絢爛たる悪運ー岸信介伝』両書の参考文献にこの書があった。 韻を踏んだ書名がまず愉快である。 うかつなことに僕は児玉誉士夫と言えば、 右翼、ロッ…

「肥州鍋島」を味わう

前日宮崎屋球三郎商店で入手した「肥州鍋島」。 佐賀・富久千代酒造の酒である。 醸造アルコールも使った普通酒である。一升1,948円。 戦後から長い間、 醸造アルコールを使った酒は「アル添」と呼ばれ評判が悪かった。 要は原料不足時代の水増しが続いてい…

工藤美代子『絢爛たる悪運 岸信介伝』(2012)

工藤美代子『絢爛たる悪運 岸信介伝』を読む。 まずタイトルがいい。 早野透『田中角栄ー戦後日本の悲しき自画像』と並行して読むと、 岸から田中へとつながる時代の日本の政治経済が浮かび上がる。 絢爛たる悪運 岸信介伝作者: 工藤美代子出版社/メーカー: …

忘れ去られた思想家、武藤貞一

坂野潤治『日本近代史』(2012) を読んでいて 気になった名前があった。 「武藤貞一」である。 この好戦的で合理主義的な軍事評論家が 1937年9月7日に発行したこの本 (引用者注:『日支事変と次に来るもの』)には、 驚くべき予測が並んでいる。 (『日本近代…

坂野潤治『日本近代史』(2012)

日本近現代史を勉強している。 「幕末から戦前の激動期を一望に収める決定版!」(本書腰巻より)、 板野潤治『日本近代史』(2012)を読む。 日本近代史 (ちくま新書)作者: 坂野潤治出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/03/01メディア: 新書購入: 7人 ク…

早野透『田中角栄ー戦後日本の悲しき自画像』(2012)

早野透『田中角栄ー戦後日本の悲しき自画像』を読む。 著者渾身の中公新書書き下ろし。 本文396ページ、主要参考文献4ページ、年譜7ページ。 いま、なぜ、田中角栄なのか。 金権政治の果てに日本戦後政治史で 忘却されつつある政治家ではないのか。 どっこい…

中村隆英『昭和史(下)1945-89』(1993/2012文庫版)

中村隆英『昭和史(下)1945-89』を読む。 昭和史(下)作者: 中村隆英出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2012/07/27メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 7回この商品を含むブログ (8件) を見る 中村は「あとがき」で書いている。 高度成長が終わるまでの…

中村隆英『昭和史(上)1926-1945』(1993/2012文庫版)

中村隆英『昭和史(上)1926-1945』を読む。 古今東西筆者によって昭和史の姿は異なる。 中高校時代にもこのあたりの歴史の授業は あっさり通り過ぎていったように記憶する。 昭和史 (上)作者: 中村隆英出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2012/07/27メ…

孫崎亨『戦後史の正体1945-2012』(2012)

書店のベストセラーランキングには なんだか怪しい本も多いがこれは面白かった。 孫崎亨『戦後史の正体1945-2012』を読む。 戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)作者: 孫崎享出版社/メーカー: 創元社発売日: 2012/07/24メディア: 単行本購入: 31人 クリック:…

麻生和子『父 吉田茂』(1993/2012新潮文庫)

麻生和子『父 吉田茂』を読む。 教科書で読む日本現代史を補完する一冊。 肉親、とりわけ娘の観察が面白いなぁと思うのは、 マスコミや歴史書の視点に縛られぬ自由闊達である。 男が権力の頂点に上り詰めても家族から見た景色はまるで違う。 父 吉田茂 (新潮…

庄司薫『さよなら怪傑黒頭巾』(1969/2012新潮文庫)

庄司薫『さよなら怪傑黒頭巾』を読む。 初めて読んだときから何十年ぶりの再読になるだろうか。 さよなら快傑黒頭巾 (新潮文庫)作者: 庄司薫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/04/27メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (11件) …

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(2009)

べらぼうに面白かった。 加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(2009) を読む。 それでも、日本人は「戦争」を選んだ作者: 加藤陽子出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2009/07/29メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 31人 クリック: 501回こ…

庄司薫『ぼくの大好きな青髭』(1977/2012新潮文庫)

庄司薫『ぼくの大好きな青髭』を読む。 読み直すのはいつ以来か、 それとも最後の「青」はちゃんと読んでいなかったか。 1969年7月20日、アポロ11号月着陸の一日、 新宿を舞台にした庄司薫くんと彼をめぐる人々の物語だ。 四部作の最終巻である。 巻末で坪内…

坪内祐三『ストリートワイズ』(1997/2009文庫版)

ストリートワイズ (講談社文庫)作者: 坪内祐三出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/04/15メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 10回この商品を含むブログ (13件) を見る 坪内祐三『ストリートワイズ』を読む。 坪内のストリートワイズの定義はこうである。 し…

梅田望夫『ウェブ進化論』(2006)(四読)

世の中には情報を得るための本と 自分の考えの骨格を作るための本がある。 この本は僕にとって後者に属する。 カンヌ・クリエティビティ・フェスティバルに通うかたわら、 梅田望夫『ウェブ進化論ー本当の大変化はこれから始まる』を読む。 2006年出版の本書…

その記憶は風化に耐えうるか

NHKスペシャル未解決事件「オウム真理教」第三部 「オウムvs警察 知られざる攻防」を観る。 ハードディスクに予約録画してまで テレビ番組を観るのは実に久しぶりのことだ。 再現ドラマとドキュメンタリーで構成していく手法で番組は進む。 元幹部・上裕史浩…

NHKスペシャル「オウム真理教17年目の真実」

NHKスペシャル「オウム真理教」第一部第二部 「オウム真理教17年目の真実」を観る。 Facebookの友人のひとりが番組のことを書いていたので 観ることにした。こうしたリンクがなければきっと見逃していた。 番組中の再現ドラマは作品としての完成度が上がらな…

宮崎市定(礪波護編)『アジア史論』(2002)

宮崎市定(礪波護編)『アジア史論』を読む。 宮崎史学のひとつの集大成であり、 かつ宮崎の著作が初めての読者には最高の入門書である。 アジア史論 (中公クラシックス)作者: 宮崎市定出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2002/03メディア: 新書 クリック…

『龍のかぎ爪 康生(上・下)』(2011/1992原著)

ジョン・バイロン/ロバート・パック(田畑暁生訳) 『龍のかぎ爪 康生(上・下)』(2011/1992原著)を読む。 魔力のある本である。 龍のかぎ爪 康生(上) (岩波現代文庫)作者: ジョン・バイロン,ロバート・パック,田畑暁生出版社/メーカー: 岩波書店発売日: …

高峰秀子『わたしの渡世日記(下)』(1976/2012文庫版)

高峰秀子『わたしの渡世日記(下)』を読み終える。 本文の面白さはいまさら言うに及ばないが、 巻末に掲載されている沢木耕太郎の解説が絶品である。 彼女は、このどこにもいないはずの「高峰秀子」に向かって ゆっくりと成熟していったように思われる。 (p…

高峰秀子『わたしの渡世日記(上)』(1976/2012文庫版)

高峰秀子『わたしの渡世日記(上)』を読む。 いやぁ、べらぼうに面白い。 既に定評のある著書ではあったが、 なぜかこれまで手にする機会がなかった。 新潮文庫に入った今回、ようやく読むことができた。 わたしの渡世日記〈上〉 (新潮文庫)作者: 高峰秀子…

宮崎市定『雍正帝』(1950,1957初出/1996文庫版)

宮崎市定『雍正帝ー中国の独裁君主』を読む。 本文はもちろんのことながら 併載論文「雍正硃批諭旨(ようせいしゅひゆし)解題 ーその史料的価値」が面白い。 解説を書いている宮崎の高弟・礪波護の発案で併載が実現した。 康煕帝、乾隆帝にはさまれ 中国史…

宮崎市定『隋の煬帝』(1965, 1959初出/1987文庫版)

宮崎市定『隋の煬帝』を読む。 中国史上で悪名高い煬帝の生涯を独自の視点で読み解く。 隋の煬帝 (中公文庫BIBLIO)作者: 宮崎市定出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2003/03/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (9件) を見る …

宮崎山脈をさらに奥地へ

宮崎市定先生の『アジア史概説』『中国史(上・下)』が あまりにも面白かったので さらに宮崎山脈を奥深く渉猟してみたくなった。 先生の師である桑原隲蔵(じつぞう)先生、内藤湖南先生、矢野仁一先生、 先生の同僚であった安部健夫先生の連山も宮崎山脈…